まばたきは
1分間に何回が普通?
研究データで見る平均と、大きすぎる個人差
このページの要点
- 「1分間に何回が正常」と言い切れる数字は存在しない。そのとき何をしているかで3倍変わり、しかも人によっても大きく違うため
- 2023年に日常場面で測られた平均: 会話中32.4回/分、歩行中31.3回/分、文章を読んでいるあいだ10.7回/分
- 安静時の報告は5〜26回/分と幅がある。よく使われる15〜20回/分という目安も、「だいたいこのあたり」以上の意味はない
- 個人差が大きい。会話中の平均32.4回に対して標準偏差は±12.4。20回の人も45回の人も、どちらも普通の範囲にいる
- 測られていると意識すると、まばたきは増える。半分無意識の動きのため。このサイトの60秒チェックが測定中に読み物を出すのは、この影響を避けるため
- 見るべきは絶対値ではなく、ふだんの自分と比べた減り方。体温計が平熱との差で熱を判断するのと同じ考え方
「1分間に何回が正常」と言い切れる数字は、存在しません。 まばたきの回数は、そのとき何をしているかで3倍変わり、しかも人によっても大きく違うからです。 絶対値をあてにできないなら、代わりに何を見ればいいのか。答えは回数そのものではなく、ふだんの自分との差です。
研究で測られた、実際の回数
2023年に発表された研究では、24人の参加者に小型のセンサーを付け、 実験室ではなく日常の場面でまばたきの回数が測られました。
| そのとき何をしていたか | まばたきの回数(平均) |
|---|---|
| 会話している | 32.4 回/分(±12.4) |
| 歩いている | 31.3 回/分(±15.5) |
| 文章を読んでいる | 10.7 回/分(±9.7) |
目を引くのは、読んでいるあいだだけ回数が3分の1に落ちていることです。 会話や歩行では30回台を保っているのに、読む作業に入ったとたん10回台まで下がります。
それでも「正常値」が決まらない理由
上の数字を見て「じゃあ普通は30回くらいなのか」と思ったなら、少し待ってください。 別の研究では、安静時のまばたきは5〜26回/分という広い幅で報告されています。 一般的な目安としてよく使われるのは15〜20回/分ですが、これも「だいたいこのあたり」という以上の意味はありません。
ばらつく理由は3つあります。
- 状況で変わる — 上の表のとおり、何をしているかで3倍違います。「安静時」の定義が研究ごとに違えば、数字も揃いません。
- 人によって違う — 標準偏差(±)の大きさに注目してください。会話中の平均32.4回に対して±12.4。つまり20回の人も45回の人も、どちらも「普通」の範囲にいます。
- 測られていることを意識すると増える — まばたきは半分無意識の動きです。「いま数えられている」と思った瞬間に、回数は不自然に増えます。
3つ目は、まばたきを測るツールを作るうえで最も厄介な問題でした。 このサイトの60秒チェックで測定中に読み物を表示しているのは、そのためです。 文章を読ませることで、「測られている」という意識を薄れさせ、ふだんの画面作業に近い状態を作っています。
見るべきは絶対値ではなく、減り方
他人の平均と自分を比べても、あまり意味がありません。あなたの「普通」が25回なのか12回なのかは、 もともと人によって違うからです。意味があるのは、ふだんのあなたと比べて、いま減っていないか。 体温計が「平熱との差」で熱を判断するのと同じ考え方です。
減らしているのは「画面」ではなく「読むこと」
ここが、多くの記事が間違えているところです。 「ブルーライトがまばたきを減らす」「画面のまぶしさが原因だ」といった説明をよく見かけますが、 先の2023年の研究は、それを支持していません。
この研究では、紙の本・ノートPC・スマートフォン・テレビのすべてで読む作業を試し、 まばたきの減り方に差がなかったと報告されています。画面の明るさや文章の難しさ、 見る距離を変えても、結果は変わりませんでした。減らしていたのは画面ではなく、 「読む」という集中作業そのものだったのです。
それでも画面作業ばかりが目のトラブルと結びつけて語られるのは、 画面作業が何時間も続いてしまうからです。 紙の本を8時間読み続ける人はまれですが、パソコン作業では珍しくありません。 短い時間なら問題にならないことが、何時間も続くことで問題になります。
まばたきが減ると、何が起きるのか
まばたきは、目の表面に涙を塗り広げる動きです。回数が減れば涙の膜は保たれにくくなり、蒸発が進みます。
1993年、慶應義塾大学の坪田一男らは、画面作業がまばたきの減少と涙の蒸発の増加の両方を伴うことを New England Journal of Medicine に報告しました。目の乾き・疲れ・かすみといった訴えは、 この状態と関連づけて語られています。
実際、日本のオフィスワーカー561人を調べた研究(通称オオサカスタディ)では、 ドライアイ「確定」が11.6%、「疑い」が54.0%。合わせて約3人に2人が該当しました。 1日8時間を超える画面作業は、リスクが約1.9倍と報告されています。
できることは、意外と地味
まばたきを増やす特効薬のようなものはありません。広く推奨されているのは、次のようなことです。
- 20-20-20ルール — 20分ごとに、20フィート(約6メートル)先を20秒間見る。米国眼科学会(AAO)と米国検眼協会(AOA)が、画面作業による目の負担をやわらげる方法として推奨しています。
- 目もとを温める — マイボーム腺機能不全診療ガイドライン(2023年)が「実施する」ことを強く推奨(エビデンスの強さA)している、自分でできるケアです。→ 目もとを温める「温罨法」は効くのか
- 意識してまばたきする — ただし、意識し続けるのは無理です。だからこそ「減ったときに気づく」仕組みが要ります。
- 症状が続くときは眼科へ — 目の乾きや痛みが続く場合、自己判断で済ませず受診を検討してください。
2つ目が、このプロジェクトを始めた理由です。「まばたきを意識しましょう」と言われても、 作業に集中すれば忘れます。忘れても大丈夫なように、減ったときにそっと教えてくれる仕組みを作っています。
出典
- Blink Rate Measured In Situ Decreases While Reading From Printed Text or Digital Devices, Regardless of Task Duration, Difficulty, or Viewing Distance. Optometry and Vision Science, 2023.(24人。会話中32.4±12.4回/分、歩行中31.3±15.5回/分、読書中10.7±9.7回/分)
- Tsubota K, Nakamori K. Dry Eyes and Video Display Terminals. New England Journal of Medicine 328:584, 1993.
- Uchino M, et al. Prevalence of dry eye disease and its risk factors in visual display terminal users: the Osaka study. American Journal of Ophthalmology, 2013.(日本のオフィスワーカー561人。確定11.6%、疑い54.0%)
- Computer vision syndrome (Digital eye strain). American Optometric Association.(20-20-20ルール)
この記事は、公開されている研究をもとにした情報提供であり、医学的な診断・治療を目的としたものではありません。 症状が続く場合は眼科の受診を検討してください。