パソコンで目が疲れる・乾くのは、なぜか
原因と対策を、研究と厚労省ガイドラインで整理する
このページの要点
- 原因はブルーライトではなく、まばたきが止まること。文章を読んでいるあいだのまばたきは10.7回/分で、会話中(32.4回/分)の3分の1程度まで落ちる
- 紙の本でも、まばたきの減り方は同じだった。2023年の研究は、紙・ノートPC・スマホ・テレビで差がないと報告している。減らしているのは画面の光ではなく「読む」という集中作業そのもの
- デスクワークでは多数派の側。日本のオフィスワーカー561人の調査で、ドライアイ「確定」11.6%・「疑い」54.0%、合わせて約3人に2人。1日8時間を超える画面作業はリスクが約1.9倍
- 環境の目安は国が示している。一連続作業1時間以内・休止10〜15分、視距離おおむね40cm以上、手元の照度300ルクス以上、画面上端は眼の高さかやや下(厚生労働省・令和元年版)
- ブルーライトカットは、効果がはっきりしない。17件の臨床試験をまとめた2023年のコクラン・レビューは、画面作業による眼精疲労をやわらげるとは言えないと結論づけている
先に結論を書きます。パソコン作業で目が疲れる・乾く主な原因は、画面の光ではなく、まばたきが止まってしまうことです。 画面を見ながら文章を読んでいるあいだ、まばたきの回数はふだんの3分の1程度まで落ちます。 まばたきは涙を目の表面に塗り広げる動きなので、止まれば涙は蒸発していきます。 ここでは、その根拠と、効果がはっきりしている対策だけを出典つきで整理します。
原因は「ブルーライト」ではなく、まばたきが止まること
2023年に発表された研究では、24人の参加者に小型のセンサーを付け、 実験室ではなく日常の場面でまばたきの回数が測られました。結果はこうです。
| そのとき何をしていたか | まばたきの回数(平均) |
|---|---|
| 会話している | 32.4 回/分(±12.4) |
| 歩いている | 31.3 回/分(±15.5) |
| 文章を読んでいる | 10.7 回/分(±9.7) |
重要なのは、この研究が紙の本・ノートPC・スマートフォン・テレビのすべてを試したうえで、 まばたきの減り方に差がなかったと報告している点です。文章の難しさや見る距離を変えても、結果は変わりませんでした。 つまり、まばたきを減らしていたのは画面の明るさやブルーライトではなく、「読む」という集中作業そのものでした。
では、なぜパソコン作業ばかりが目のトラブルと結びつけて語られるのか。答えは単純で、 パソコン作業は何時間も続いてしまうからです。紙の本を8時間読み続ける人はまれですが、 デスクワークでは珍しくありません。まばたきが減った状態が長引くほど、涙は蒸発し続けます。
1993年、慶應義塾大学の坪田一男らは、画面作業がまばたきの減少と涙の蒸発の増加の両方を伴うことを New England Journal of Medicine に報告しています。「画面を見ていると目が乾く」という体感には、30年以上前から裏づけがあります。
どれくらいの人が、同じことで困っているのか
日本のオフィスワーカー561人を対象にした研究(通称オオサカスタディ)では、 ドライアイ「確定」が11.6%、「疑い」が54.0%。合わせて約3人に2人(65.6%)が該当しました。 さらに、1日8時間を超える画面作業はリスクが約1.9倍と報告されています。
目が疲れるのも乾くのも、デスクワークをしていれば多数派の側です。根性や慣れの問題ではありません。
厚生労働省が示している、作業環境の基準
日本には、パソコン作業の環境について国が示した基準があります。 厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日付け基発0712第3号)です。 もとは職場向けの通達ですが、在宅のデスク環境をととのえるときにもそのまま使えます。
| 項目 | ガイドラインが示す目安 |
|---|---|
| 連続作業時間 | 一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までに10〜15分の作業休止時間を設ける。作業時間内にも1〜2回の小休止を挟む |
| 画面との距離 | おおむね40cm以上の視距離を確保する |
| 画面の高さ | 画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さが望ましい |
| 手元の明るさ | 書類上・キーボード上の照度は300ルクス以上とし、作業しやすい照度にする |
| 明るさの差 | 画面の明るさ・手元の明るさと、周辺の明るさの差はなるべく小さくする |
| 文字の大きさ | 文字高さがおおむね3mm以上が望ましい |
出典: 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて(令和元年7月12日付け基発0712第3号)本文
グレアの防止、姿勢、健康診断の項目まで含めた全体は、 情報機器作業ガイドラインの照度・視距離・作業時間に条文どおり整理しました。 なお、よく引用される「ディスプレイ画面上の照度は500ルクス以下」は旧VDTガイドラインの規定で、現行版にはありません。
画面の高さが目安として挙がっているのには、まばたきと直接つながる理由があります。 画面を見あげると目を大きく見開くことになり、露出する眼の表面が広がって涙が蒸発しやすくなります。 逆にやや見おろす姿勢ならまぶたの開きが小さくなり、乾きにくくなります。 ノートPCを直置きして下を向く姿勢は目にはやさしい一方、首には厳しいので、 外付けキーボードとスタンドで「画面はやや下、首はまっすぐ」を両立させるのが現実的です。
今日からできる対策(根拠がはっきりしている順)
- 1時間ごとに、10〜15分は画面から離れる — 上のガイドラインが示す基準そのものです。集中していると忘れますが、この1つが効きます。
- 20分ごとに、20秒だけ遠くを見る(20-20-20ルール) — 「20分ごとに、20フィート(約6メートル)先を、20秒間見る」。 米国眼科学会(AAO)と米国検眼協会(AOA)が、画面作業による目の負担をやわらげる方法として推奨しています。 席を立てないときの現実的な選択肢ですが、実践できている人は8.8%という調査もあります。
- 目もとを温める — 自分でできるケアの中で、いちばん推奨が強い方法です。マイボーム腺機能不全診療ガイドライン(2023年)は、 温罨法を「実施する」ことを強く推奨し、エビデンスの強さをA(強)としています。 温度と時間の目安は目もとを温める「温罨法」は効くのかに整理しました。
- 乾いた風を顔に当てない — エアコンや扇風機の風が顔に直接当たると、涙は先に乾きます。風向きを変えるだけで体感が変わることがあります。 空気が乾く季節は、デスクに加湿器を置くのも手です。
- 画面と手元の明るさをそろえる — ガイドラインは、画面や手元の明るさと周辺の明るさの差をなるべく小さくするよう求めています。 画面だけが明るく周囲が暗い状態が、まさにこの差が大きい状態です。 手元が暗いなら、画面を暗くするのではなく手元を明るくするほうが、300ルクス以上という基準にも沿います。
- 症状が続くときは眼科へ — 目の乾き・痛み・かすみが続く場合、自己判断で済ませず受診を検討してください。 ドライアイには治療法があり、市販の目薬で紛らわせ続けるより早く楽になることがあります。
「意識してまばたきする」が続かない理由
対策としてよく挙がる「意識してまばたきをする」は、理屈としては正しいのですが、ほぼ続きません。 まばたきは半分無意識の動きで、作業に集中した瞬間に、意識のほうが先に消えるからです。 意識できているあいだは、そもそも集中できていないとも言えます。 だから必要なのは「気をつける」ことではなく、忘れても大丈夫な仕組みのほうです。
効果がはっきりしないもの — ブルーライトカット
パソコン作業の目の疲れ対策として、まず名前が挙がるのがブルーライトカット眼鏡です。 しかし17件の臨床試験をまとめた2023年のコクラン・レビューは、 ブルーライトカットレンズが画面作業による眼精疲労をやわらげるとは言えないと結論づけています。 米国眼科学会も、パソコン用のブルーライト遮断眼鏡を推奨していません。
効かない理由は、この記事の最初に書いたとおりです。目を疲れさせているのは光ではなく、 まばたきが止まる「読む」という作業のほうだからです。
まず、いまの自分のまばたきを測ってみませんか
カメラで60秒。パソコン作業中のあなたのまばたきが、いま1分間に何回かを測れます。 インストールは不要で、映像はブラウザの中だけで処理され、どこにも送信されません。
60秒チェックを始める忘れても大丈夫にする、という手
休憩も、まばたきも、「気をつける」ではまず続きません。 そこで、作業中のまばたきをブラウザが見守り、減ってきたときだけ知らせる無料のアプリを用意しています。 20分ごとの休憩リマインダーも入っているので、20-20-20ルールをそのまま任せられます。 カメラの映像は端末の外に出ません。
出典
- Blink Rate Measured In Situ Decreases While Reading From Printed Text or Digital Devices, Regardless of Task Duration, Difficulty, or Viewing Distance. Optometry and Vision Science, 2023.(24人。会話中32.4±12.4回/分、歩行中31.3±15.5回/分、読書中10.7±9.7回/分。媒体による差なし)
- Tsubota K, Nakamori K. Dry Eyes and Video Display Terminals. New England Journal of Medicine 328:584, 1993.
- Uchino M, et al. Prevalence of dry eye disease and its risk factors in visual display terminal users: the Osaka study. American Journal of Ophthalmology, 2013.(日本のオフィスワーカー561人。確定11.6%、疑い54.0%)
- 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインと解説. 厚生労働省、令和元年7月12日付け基発0712第3号.(連続作業時間、視距離、画面の高さ、照度)
- Singh S, et al. Blue-light filtering spectacle lenses for visual performance, sleep, and macular health in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2023.(17件のRCT)
- Computer vision syndrome (Digital eye strain). American Optometric Association.(20-20-20ルール)
この記事は、公開されている研究や公的機関の資料をもとにした情報提供であり、医学的な診断・治療を目的としたものではありません。 症状が続く場合は眼科の受診を検討してください。