ドライアイの目薬の選び方
市販薬のラベルで見るところと、処方薬との違い
このページの要点
- ガイドラインが「推奨」している点眼薬は、すべて市販されていない。ヒアルロン酸点眼・ジクアホソルナトリウム点眼・レバミピド点眼は、いずれも眼科の処方薬
- 目薬そのものが、ドライアイの原因のリストに載っている。ガイドラインは蒸発亢進型の外因性の原因に「(点眼剤に含まれる)防腐剤」を挙げている
- 特に注意されているのは、塩化ベンザルコニウム(BAK)。ガイドラインは無添加の点眼を治療の選択肢として提案している
- 充血を取る目薬は、日本眼科医会が「避けたほうがいい」としている。「副作用のほうが強いことが多い」という理由
- このページでは、特定の市販薬をすすめない。効能をこちらの言葉で語らず、ガイドラインと公的団体が何と書いているかだけを示します
目が乾けば、まず目薬を買う。自然な流れですが、ドラッグストアの棚の前で固まった経験がある人は多いはずです。 「ドライアイ用」と書かれたものだけで何種類もあり、値段も成分もばらばらです。 ここではどれを買うべきかではなく、ラベルのどこを見れば判断できるかを整理します。 判断材料は、日本のドライアイ診療ガイドラインと日本眼科医会の記述に限りました。
このページの書き方について
医薬品の効能を、運営者の言葉で語ることはしません(薬機法)。 このページに書いてあるのは「診療ガイドラインと日本眼科医会が、何と書いているか」だけです。 特定の製品へのリンクも置いていません。最後に判断するのはあなたと、薬剤師・眼科医です。
まず知っておきたい、市販薬と処方薬の断層
ドライアイ診療ガイドラインは、治療の選択肢ごとに推奨の強さを示しています。 点眼に関する部分を抜き出すと、次のようになります。
| 点眼薬 | ガイドラインの推奨 | 入手 |
|---|---|---|
| ヒアルロン酸点眼 | 「実施する」ことを推奨する | 処方薬 |
| ジクアホソルナトリウム点眼 | 「実施する」ことを推奨する | 処方薬 |
| レバミピド点眼 | 「実施する」ことを推奨する | 処方薬 |
| 人工涙液点眼 | 「実施する」ことを提案する | 処方薬・市販薬 |
| 塩化ベンザルコニウム無添加の点眼 | 「実施する」ことを提案する | 処方薬・市販薬 |
| 副腎皮質ステロイド点眼 | 「実施する」ことを提案する(眼圧上昇に留意) | 処方薬 |
| 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)点眼 | 「実施しない」ことを提案する | 処方薬 |
| シクロスポリン点眼 | 「実施しない」ことを提案する(本邦では保険適用外) | 処方薬 |
出典: ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会「ドライアイ診療ガイドライン」ガイドラインサマリー. 日本眼科学会雑誌 123巻5号(令和元年5月10日)
表を上から見ていくと、はっきりした事実が一つあります。 ガイドラインが「推奨」(最も強い区分)を与えた3つの点眼薬は、すべて処方薬です。 ドラッグストアの棚には並びません。
日本眼科医会も、医療用の点眼薬について「人工涙液、ヒアルロン酸製剤などがその代表です」としたうえで、 近年は「眼の中から水分やムチンなどを出させる点眼薬が登場してきた」と説明しています。 涙を足すのではなく、目そのものに涙の成分を出させる、という発想の薬です。 これも市販されていません。
「市販薬で足りないなら眼科へ」というのは、根性論ではありません。 選択肢の数そのものが違う、という話です。
市販の目薬について、日本眼科医会が書いていること
公益社団法人 日本眼科医会は、一般向けのページで市販の点眼薬について次のように述べています。
「短時間で元に戻ってしまいます」
「種類によっては防腐剤が含まれているものもあり、たくさん使うことでかえって障害を起こす場合もあります」
「単に充血を取るための点眼薬は、副作用のほうが強いことが多いので避けたほうがいいでしょう」
出典: ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―. 公益社団法人 日本眼科医会
3つ目は、市販の目薬選びにそのまま使える指針です。 「充血がすっと取れる」ことと「目の状態がよくなる」ことは別で、 前者は血管を細くしているだけのことがあります。
ラベルで確認したい3つのこと
1. 防腐剤(特に塩化ベンザルコニウム)
ドライアイ診療ガイドラインは、蒸発亢進型ドライアイの外因性の原因として、 ビタミンA欠乏・コンタクトレンズ装用・アレルギー性結膜炎とならんで 「(点眼剤に含まれる)防腐剤」を挙げています。乾きを止めるために使うものが、原因側のリストに載っています。
さらに同ガイドラインは、薬剤性角膜上皮障害について、 原因となる点眼薬として「角膜知覚を低下させる交感神経β遮断薬や非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、 点眼薬に含まれる防腐剤、特に塩化ベンザルコニウム(BAK)などが挙げられる」と記し、 疑われる場合は「使用中の点眼薬、含有されているBAKの有無や濃度を確認し、原因と考えられる点眼薬を一度すべて中止する」としています。
これを踏まえて、CQ18の推奨はこうなっています。
CQ18 ドライアイの治療では、塩化ベンザルコニウム無添加の点眼を用いるべきか?
「塩化ベンザルコニウム無添加の点眼が症状、所見の改善を促す場合があり、治療の選択肢として提案する。」
推奨の強さ: 「実施する」ことを提案する
ラベルでの見かた: 市販の点眼薬では、成分表示のうしろのほうに添加物が並びます。 「ベンザルコニウム塩化物」「塩化ベンザルコニウム」の表記がそれです。 無添加の製品は「防腐剤無添加」「防腐剤フリー」と目立つ位置に書かれていることが多く、 1回使い切りの小分け容器になっている製品もあります。
なお、これは「防腐剤入りは使ってはいけない」という意味ではありません。 ガイドラインの推奨は「提案する」であって「強く推奨」ではなく、 日本眼科医会の注意も「たくさん使うことでかえって障害を起こす場合もある」という書き方です。 1日に何度もさす人ほど、この項目を気にする意味が大きいと読むのが妥当なところです。
2. 血管収縮剤(充血を取る成分)
上に引いたとおり、日本眼科医会は「単に充血を取るための点眼薬は、副作用のほうが強いことが多いので避けたほうがいいでしょう」としています。
ラベルでの見かた: 有効成分の欄にある 「ナファゾリン塩酸塩」「テトラヒドロゾリン塩酸塩」といった名前が、この種類の成分です。 パッケージに「充血」と大きく書かれている製品にはたいてい入っています。 乾きが主訴のときに必要な成分かどうかは、一度立ち止まって考える価値があります。
3. 清涼感(メントール)
ラベルでの見かた: 「l-メントール」などの表記、 あるいはパッケージの「清涼感レベル」の数字です。
清涼感は冷たく感じさせる成分による感覚であって、涙の状態を表すものではありません。 「すっきりしたから効いた」と感じやすいぶん、判断を狂わせることがあります。 しみる・痛いと感じるなら、その製品は合っていない可能性があります。
共通の注意
いずれの製品も、添付文書に書かれた用法・用量を超えて使わないこと。 「乾いたらいつでも」と考えて回数が増えていくと、上で見た防腐剤の話が効いてきます。 コンタクトレンズを着けたまま使えるかどうかも、製品ごとに表示が違います (→ コンタクトレンズと目の乾き)。 迷ったら、その場で薬剤師に聞くのがいちばん早い方法です。
目薬以外で、ガイドラインの推奨が強いもの
意外に思われるかもしれませんが、自分でできるケアの中で最も推奨が強いのは、点眼ではありません。 マイボーム腺機能不全診療ガイドライン(2023年)は、目もとを温めること(温罨法)について 「実施する」ことを強く推奨する、エビデンスの強さをA(強)としています。 ドライアイ診療ガイドラインでヒアルロン酸点眼に与えられた「推奨する」よりも、区分としては上です。
目薬売り場で悩む前に試せることがある、という意味では、こちらのほうが現実的かもしれません。 → 目もとを温める「温罨法」は効くのか
そもそも、なぜ乾くのか
点眼は足りない涙を補うための手段です。 では、なぜ涙が足りなくなっているのか。 ドライアイ診療ガイドラインは、蒸発亢進型の内因性の原因として マイボーム腺機能不全・眼瞼異常とならんで瞬目回数低下を挙げています。
画面を見ながら文章を読んでいるあいだ、まばたきは会話中の3分の1程度 (会話中32.4回/分に対し、読む作業中10.7回/分)まで落ちます。 まばたきが止まっているあいだは、何をさしても、その涙は塗り広げられません。
いまのまばたきを、60秒で測ってみませんか
カメラで60秒。作業中のあなたのまばたきが、1分間に何回かを測れます。 インストールも登録も不要で、映像はブラウザの中だけで処理され、どこにも送信されません。
60秒チェックを始める眼科を考えたほうがよいとき
- 市販の目薬を使っても変わらない、あるいはさす回数が増えている
- 目の乾き・痛み・かすみが数か月続いている
- 見え方に影響が出ている(かすむ、夕方に見えにくい)
- 複数の点眼薬を並行して使っている(薬剤性角膜上皮障害では、点眼薬の見直しが最初の手になります)
受診すべきかどうか迷う場合は、ドライアイ症状チェックで 自覚症状を診断基準の枠組みに沿って整理できます(問診式・カメラ不要、入力は送信されません)。
出典
- ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会. ドライアイ診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123巻5号、令和元年(2019)5月10日.(ガイドラインサマリーの推奨一覧 / CQ18 塩化ベンザルコニウム無添加の点眼 / 蒸発亢進型ドライアイの原因分類 / トピックス1 薬剤性角膜上皮障害)
- ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―. 公益社団法人 日本眼科医会.(市販点眼薬の注意、充血を取る点眼薬、医療用点眼薬の種類)
- マイボーム腺機能不全診療ガイドライン作成委員会. マイボーム腺機能不全診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 127巻2号 109ページ〜、令和5年(2023)2月10日.(CQ-18 温罨法: 「実施する」ことを強く推奨する、エビデンスの強さA)
- Blink Rate Measured In Situ Decreases While Reading From Printed Text or Digital Devices, Regardless of Task Duration, Difficulty, or Viewing Distance. Optometry and Vision Science, 2023.(会話中32.4回/分、読む作業中10.7回/分)
この記事は、公開されている診療ガイドライン・査読論文・公的機関の資料をもとにした情報提供であり、 医学的な診断・治療、および特定の医薬品の推奨を目的としたものではありません。 医薬品の使用にあたっては、添付文書の用法・用量を守り、薬剤師または医師にご相談ください。 症状が続く場合は眼科の受診を検討してください。