まばたきチェック 60秒で測ってみる

目もとを温める「温罨法」は効くのか

ガイドラインが「強く推奨」した、数少ないセルフケア

このページの要点

  • 日本のガイドラインは、温罨法を「実施する」ことを強く推奨している。マイボーム腺機能不全診療ガイドライン(2023年)CQ-18。エビデンスの強さはA(強)、作成委員の投票は12人/12人
  • 目安は40℃以上。TFOS DEWS IIは、マイボーム腺を40℃以上に温めることが必要と考えられるとしている(デバイスの表面温度ではなく、まぶたの裏側の温度)
  • 蒸しタオルは、専用デバイスより効果が低いとガイドラインが書いている。理由は温度が保てないこと
  • 1回では続かない。単回使用では症状の改善が30分までしか続かなかったという報告がある。習慣にできるかどうかが、方法の選択より重要
  • まぶたを洗う(眼瞼清拭)は、推奨が一段弱い。CQ-19は「弱く推奨」。クレンジング剤の種類によっては有害事象の可能性がある

目の乾きの対策として「目もとを温めるといい」とはよく言われます。 ただ、この手の話はたいてい根拠があいまいです。このサイトでは ブルーライトカット20-20-20ルールも、 調べたうえで「根拠は弱い」と書いてきました。 温罨法(おんあんぽう)はその中で例外です。日本の診療ガイドラインが、はっきりと「強く推奨する」と書いています。 以下、その中身を原典から確かめていきます。

ガイドラインは何と書いているか

2023年2月、日本眼科学会・日本角膜学会・ドライアイ研究会の監修で 「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」が発行されました。 Minds方式に沿って、30のクリニカルクエスチョン(CQ)にシステマティックレビューで答えたものです。 温罨法はCQ-18にあたります。

CQ-18 マイボーム腺機能不全患者に温罨法は有効か?

推奨提示: 温罨法はマイボーム腺機能不全の自覚症状、meibumの質(meibum grade)を改善する。マイボーム腺機能不全への治療として行うことを強く推奨する。

推奨の強さ: 「実施する」ことを強く推奨する(投票結果: 12人/12人、100%)
CQに対するエビデンスの強さ: A(強) — 効果の推定値に強く確信がある

このガイドラインの推奨は4段階(強く推奨する / 弱く推奨する / 実施しないことを弱く推奨する / 実施しないことを強く推奨する)で、 エビデンスの強さはA〜Dの4段階です。温罨法は、その両方で最上位に置かれています。 30あるCQの中で「実施することを強く推奨する」がついたものは、ごく限られています。

出典: マイボーム腺機能不全診療ガイドライン作成委員会「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」日本眼科学会雑誌 127巻2号 109ページ〜(令和5年2月10日). CQ-18(担当: 有田玲子、森重直行)

どんな研究をまとめた結果なのか

ガイドラインの作成委員会は、温罨法の効果を検討した研究のうち、アウトカム単位で評価可能な42篇を選び、 項目ごとに集計しています。内訳は次のとおりです。

評価項目評価した論文数と結果
自覚症状33篇中、改善32・不変1
meibum grade(油の質)20篇中、改善19・不変1
マイボーム腺開口部・周囲所見18篇中、改善13・不変5
涙液層破壊時間(BUT)33篇中、改善25・不変8
角結膜上皮障害15篇中、改善10・不変5
有害事象言及した10篇中、あり1篇(一時的かつ可逆的)

そのうえで、使われたデバイスが偏らないように、3篇の無作為化比較試験(RCT)と3篇の臨床研究、 合計6篇を最終的なシステマティックレビューの対象としています。 この6篇ではすべての研究で自覚症状の改善が得られ、meibumの質もいずれの研究でも改善していました。

なお、この6篇に採用されたデバイスの中には、日本で市販されている「あずきのチカラ」(Azuki no chikara)を用いた 有田らの研究が含まれています。ガイドラインは、この研究で温罨法施行後1か月でmeibum gradeの有意な改善がみられたと記しています。

なぜ温めると変わるのか — マイボーム腺の話

まぶたの縁にはマイボーム腺という腺が並んでいて、ここから油(meibum)が出ています。 この油が涙の表面に薄い膜を張り、涙が蒸発するのを抑えています。

この油が固まって出にくくなった状態がマイボーム腺機能不全(MGD)です。 油の膜が薄くなれば涙は蒸発しやすくなり、 蒸発亢進型のドライアイにつながります。 ガイドラインの緒言によれば、国内の疫学調査では50歳以上の日本人の10〜30%程度がMGDとされています。

温めるのは、この固まった油をゆるめるためです。日本眼科医会も、 「瞼の縁には、涙の中に油を出す『マイボーム腺』があり、温めることで分泌が良くなり、ドライアイ治療にも有効である」と説明しています。 バターが冷えると固まり、温めると流れるのと同じ話です。

出典: ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―. 公益社団法人 日本眼科医会

何℃で、何分か

温度と時間の具体的な数字は、国際的なレビューであるTFOS DEWS IIの Management and Therapy報告に書かれています。

項目TFOS DEWS II の記述
必要な温度個々のマイボーム腺を40℃以上に温めることが、最適な温罨法に必要と考えられる
どこの温度かデバイスの表面温度ではなく、眼瞼結膜(まぶたの裏側)の温度
時間45℃に温めた温罨法を、外側のまぶたに最低5分間
タオルの場合温度を保つため2分ごとに取り替える

出典: TFOS DEWS II Management and Therapy Report. The Ocular Surface (2017)

「40℃以上」と聞くと低く感じるかもしれませんが、これはまぶたの裏側で40℃という意味です。 表面が40℃のものを当てても、内側はそこまで上がりません。 2分ごとに取り替えるという指示が付いているのは、そのためです。

蒸しタオルか、市販のアイマスクか

ここについて、マイボーム腺機能不全診療ガイドラインは踏み込んだ書き方をしています。

「タオルを用いた温罨法については、上述のデバイスと比較して効果が低いと報告されており、 より高い治療効果を求めるには、タオルよりも温罨法デバイスを奨めるべきと思われる」

「SRで評価した温罨法のデバイスとして採用されたものは、いずれも価格が数ドル〜数十ドル程度のものであり、 再利用できるものであった」

理由ははっきりしています。蒸しタオルは冷めるからです。 電子レンジで温めたタオルは、当てて2〜3分もすれば体温に近づきます。 上で見たとおり、必要なのは「まぶたの裏側で40℃以上を保つこと」で、冷めたタオルはこの条件を満たしません。

ガイドラインが費用について触れているのは、「高価な機械が要るから推奨レベルを下げる」という判断を退けるためです。 実際、委員会は「温罨法自体がホームケアに近い治療法であり保険適用を求める必要性が低いこと、 また温罨法を行うのに必要なデバイスは安価で再利用が可能であることから、 費用面や保険適用であるか否かが推奨レベルに影響を及ぼすものではない」と判断した、と記しています。

限界 — 1回では終わらない

推奨は強いのですが、万能ではありません。正直に書いておきます。

やってはいけないこと

まぶたを洗う(眼瞼清拭)はどうか

温めることとセットでよく語られるのが、まぶたの縁をきれいにする眼瞼清拭(リッドハイジーン)です。 ガイドラインのCQ-19は、こちらは「実施する」ことを弱く推奨するとしています。温罨法より一段弱い位置づけです。

CQ-19 マイボーム腺機能不全患者に眼瞼清拭は有効か?

「マイボーム腺機能不全患者に対して、水で湿らせた綿球を用いて行う眼瞼清拭は自覚症状、涙液層破壊時間を改善する可能性がある。 市販のクレンジング剤を用いた眼瞼清拭は自覚症状、マイボーム腺開口部・周囲所見、meibum grade、涙液層破壊時間、角結膜上皮障害を改善する可能性がある。 使用するクレンジング剤の種類によっては、重篤ではないものの有害事象が生じる可能性がある。 以上より、マイボーム腺機能不全に対して眼瞼清拭を実施することを弱く推奨する」

なお、海外では長らく「ベビーシャンプーを薄めて洗う」方法が紹介されてきましたが、 TFOS DEWS IIはベビーシャンプーが杯細胞(ゴブレット細胞)の機能に悪影響を及ぼす可能性があると指摘しています。 杯細胞は涙のムチンを作る細胞で、ドライアイと直接関係します。目もと用として売られているものを使うほうが無難です。

手助けになる定番アイテム

温罨法で肝心なのは、温度が保てることと、続けられることの2つです。 使い切りタイプは手軽さ、繰り返し使うタイプは経済性で選ばれています。 どちらもガイドラインのシステマティックレビューが対象とした「安価で再利用可能なデバイス」に近い価格帯です。

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温めるだけでは届かない部分がある

温罨法が改善するのは油の質です。作業中にまばたきが止まっていることは、温めても変わりません。 カメラで60秒、いまのあなたのまばたきが1分間に何回かを測れます。映像はブラウザの中だけで処理され、送信されません。

60秒チェックを始める

出典

  1. マイボーム腺機能不全診療ガイドライン作成委員会. マイボーム腺機能不全診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 127巻2号 109ページ〜、令和5年(2023)2月10日. 監修: 日本眼科学会・日本角膜学会・ドライアイ研究会.(CQ-18 温罨法: 強く推奨・エビデンスA / CQ-19 眼瞼清拭: 弱く推奨 / MGD有病率、SRの内訳、タオルとデバイスの比較)
  2. Jones L, et al. TFOS DEWS II Management and Therapy Report. The Ocular Surface 15(3):575-628, 2017.(40℃以上・45℃で5分・2分ごとの交換、単回では30分、コンプライアンス、ベビーシャンプーと杯細胞)
  3. ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―. 公益社団法人 日本眼科医会.(マイボーム腺と温めること)
  4. ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会. ドライアイ診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123巻5号、令和元年(2019)5月10日.(蒸発亢進型ドライアイの原因分類)

この記事は、公開されている診療ガイドライン・査読論文・公的機関の資料をもとにした情報提供であり、 医学的な診断・治療を目的としたものではありません。紹介している市販品は医薬品ではなく、 特定の効能・効果を保証するものでもありません。症状が続く場合は眼科の受診を検討してください。