コンタクトレンズで目が乾く
「コンタクトでドライアイになる」と言い切れない理由と、対処
このページの要点
- あなただけではない。TFOSの国際ワークショップは、装用者の最大半数が何らかの頻度・程度で不快感を経験しているとしている
- 装用者の12〜51%が、コンタクトの使用そのものをやめている。そして中止の主な理由が、この不快感である
- 「コンタクトでドライアイになる」は、まだ言い切れない。日本のガイドラインは症状が出やすくなることと病気を発症させることを分けて書いている
- ガイドラインが挙げる対処は3つ。人工涙液、レンズ素材・レンズケア材の変更、内服。レンズを替えるという選択肢が条文に入っている
- 目薬の防腐剤に注意。塩化ベンザルコニウム(BAK)は、ガイドラインが蒸発亢進型ドライアイの外因性の原因として挙げている
朝は問題なかったのに、夕方になるとゴロゴロして外したくなる。 以前は1日中着けていられたのに、いつからか午後がつらい。 コンタクトレンズを使っている人の多くが経験することですが、 「コンタクトのせいでドライアイになった」という説明は、実は医学的にはまだ確定していません。 ここでは、何がどこまで分かっているのかを原典から整理し、ガイドラインが挙げる対処をまとめます。
どれくらいの人が、同じことで困っているのか
コンタクトレンズ装用に伴う不快感は、国際的には contact lens discomfort(CLD)という独立した概念として扱われています。 2013年、TFOS(涙液・眼表面学会)が国際ワークショップを開いてこの問題を体系的にまとめました。
| 項目 | TFOS国際ワークショップの記述 |
|---|---|
| 不快感を経験する人 | 多くの推計では、装用者の最大半数が何らかの頻度・程度でこの問題を経験している |
| 装用の中止(ドロップアウト) | 装用者の12%〜51%がコンタクトレンズ装用を中止している |
| 中止の主な理由 | 装用に伴う不快感(CLD) |
同ワークショップは、CLDを次のように定義しています。
contact lens discomfort の定義
「レンズ装用に関連した、断続的または持続的な不快な眼の感覚を特徴とする状態であり、 視覚の障害を伴う場合と伴わない場合がある。コンタクトレンズと眼の環境との適合性が低下したことによって生じ、 装用時間の短縮やコンタクトレンズ装用の中止につながりうる」(筆者訳)
注目したいのは「適合性が低下したこと」という言い方です。 レンズが悪いとも、目が悪いとも書いていません。組み合わせの問題として定義されています。 だからこそ、後で見るように「レンズを替える」がまっとうな対処になります。
「コンタクトでドライアイになる」は、どこまで言えるのか
日本のドライアイ診療ガイドライン(2019年)は、ライフスタイルとドライアイ発症の関係を扱ったCQ4で、 次のように書いています。
「喫煙はドライアイ発症の危険因子である。また長時間のvisual display terminals(VDT)作業、 オメガ3脂肪酸に対してオメガ6脂肪酸の摂取量が多いことがドライアイ発症の危険因子になる。 コンタクトレンズ装用はドライアイ症状を呈するリスクを高めるが、ドライアイ発症の危険因子となるかどうかは不明である。」
喫煙とVDT作業には「危険因子である」と言い切っているのに、コンタクトレンズだけは書き方が違います。 症状が出やすくなることは認めつつ、病気そのものを発症させるかは分からない、という慎重な表現です。
一方で、同じガイドラインは蒸発亢進型ドライアイの外因性の原因として、 ビタミンA欠乏・点眼剤に含まれる防腐剤・アレルギー性結膜炎とならんで コンタクトレンズ装用を挙げています。 「発症の危険因子かは不明」と「蒸発を促す外因の一つ」は、矛盾ではありません。 いま乾いていることの説明にはなるが、将来の病気を予測する因子とまでは言えない、という段階です。
出典: ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会「ドライアイ診療ガイドライン」日本眼科学会雑誌 123巻5号(令和元年5月10日)
なぜこの区別にこだわるのか
「コンタクトはドライアイの原因です」と書くほうが記事としては分かりやすいのですが、 そう書いた瞬間、コンタクトをやめれば解決するという誤解が生まれます。 実際には、コンタクトをやめても画面作業を続けていれば乾きは残ります。 原因を一つに決めつけないほうが、結果的に自分に効く対策にたどり着けます。
ガイドラインが挙げる対処
ドライアイ診療ガイドラインには、コンタクトレンズ装用者専用のCQが立っています(CQ19)。 推奨は次のとおりです。
CQ19 コンタクトレンズ装用者のドライアイはどう治療すべきか?
「人工涙液の使用を提案する。また、レンズ素材・レンズケア材の変更、内服を治療の選択肢として提案する。」
推奨の強さ: 人工涙液の使用、レンズ素材、レンズケア材改善、内服治療を「実施する」ことを提案する
- レンズ素材を替える — 「合わないなら我慢する」ではなく、ガイドラインに書かれた選択肢です。 素材・含水率・design・1日使い捨てかどうかで装用感は変わります。処方は眼科で受けられます
- レンズケア材(洗浄液・保存液)を替える — こちらも条文に入っています。同じレンズでもケア用品との相性で装用感が変わることがあります
- 人工涙液 — コンタクト装用中に使えるかどうかは製品ごとに違います。表示を確認してください
- 装用時間を減らす — 日本眼科医会は「夜間や週末は装用を減らして目を休ませてあげることも重要です」としています。 在宅の日はメガネ、という切り替えだけでも変わることがあります
出典: ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―. 公益社団法人 日本眼科医会
目薬の防腐剤には気をつける
乾くから目薬をさす、という対処には落とし穴があります。 ドライアイ診療ガイドラインは、蒸発亢進型ドライアイの外因性の原因として 「(点眼剤に含まれる)防腐剤」を挙げています。原因のリストに目薬そのものが載っているということです。
同ガイドラインは、薬剤性角膜上皮障害の原因となる点眼薬として、 角膜知覚を低下させる交感神経β遮断薬やNSAIDとならんで 「点眼薬に含まれる防腐剤、特に塩化ベンザルコニウム(BAK)」を挙げています。 そのうえでCQ18では、塩化ベンザルコニウム無添加の点眼を治療の選択肢として提案しています。
コンタクトレンズを着けたまま点眼してよいかどうかは、製品ごとに違います。 パッケージや添付文書の表示を必ず確認してください。 ラベルの読み方はドライアイの目薬の選び方にまとめました。
レーシック・ICLのあとに乾く場合
コンタクトをやめて屈折矯正手術を選んだあと、かえって乾きが気になるという話もよく聞きます。 ガイドラインの記述は次のとおりです。
- 「角膜上皮障害と涙液層破壊時間(BUT)の低下は、眼内外の前眼部手術全般によって誘発される可能性が高いことが示唆された。 涙液分泌量は角膜切開または切除を行う手術〔白内障、LASIK〕で低下することが示唆された」(CQ21)
- 「術前にドライアイの患者はLASIK後も非ドライアイ患者に比較してドライアイの程度が強いことが示唆された」。 一方で「ドライアイ患者に対するLASIKは、その有用性と安全性に関して非ドライアイ患者に対するものと同等と考えられる」(CQ22)
つまり、手術前から乾いていた人は、手術後も乾きやすい傾向がある一方で、 ドライアイだから手術ができない・危険だ、という話ではない、という整理です。 術前にドライアイの状態を把握しておくことに意味がある、と読めます。
見落とされがちな、もう一つの原因
レンズを替えても、目薬を替えても変わらないとき、疑ってほしいのがまばたきの回数です。
ドライアイ診療ガイドラインは、蒸発亢進型の内因性の原因として マイボーム腺機能不全・眼瞼異常とならんで瞬目回数低下を挙げています。 そして2023年の研究によれば、文章を読んでいるあいだのまばたきは、会話中の3分の1程度 (会話中32.4回/分に対し、読む作業中10.7回/分)まで落ちます。
コンタクトを着けているかどうかにかかわらず、画面を見ている時間の長さが効いてきます。 レンズの問題として探し続けても見つからないのは、原因がレンズの外にあるからかもしれません。
まず、いまの自分のまばたきを測ってみませんか
カメラで60秒。コンタクトを着けたままでも測れます。 インストールも登録も不要で、映像はブラウザの中だけで処理され、どこにも送信されません。
60秒チェックを始める環境を変えるという手
コンタクト装用中の乾きは、周囲の空気にかなり左右されます。 日本眼科医会は「エアコンの効き過ぎや送風を直接受けるような環境はよくありません」「加湿器を入れるなどして対応しましょう」としています。 風向きを変える、デスクに加湿器を置く、といった対応は、レンズを替えるより先に試せます。
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眼科を考えたほうがよいとき
- 装用できる時間が、以前よりはっきり短くなった
- レンズを外しても、乾きやゴロゴロが続く
- 充血が引かない、痛みがある、見え方が変わった
- 市販の目薬をさす回数が、日に何度も増えている
ガイドラインが挙げる対処のうちレンズ素材の変更は、眼科での処方が前提です。 自分で選べる範囲だけで粘るより、選択肢が増えます。
出典
- Nichols JJ, et al. The TFOS International Workshop on Contact Lens Discomfort: Executive Summary. Investigative Ophthalmology & Visual Science 54(11):TFOS7-TFOS13, 2013.(装用者の最大半数が不快感、ドロップアウト12〜51%、CLDの定義)
- ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会. ドライアイ診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123巻5号、令和元年(2019)5月10日.(CQ4 ライフスタイル / CQ18 塩化ベンザルコニウム / CQ19 コンタクトレンズ装用者 / CQ21・CQ22 手術の影響 / 蒸発亢進型の原因分類 / 薬剤性角膜上皮障害)
- ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―. 公益社団法人 日本眼科医会.(装用を減らして目を休ませる、エアコンと加湿)
- Blink Rate Measured In Situ Decreases While Reading From Printed Text or Digital Devices, Regardless of Task Duration, Difficulty, or Viewing Distance. Optometry and Vision Science, 2023.(会話中32.4回/分、読む作業中10.7回/分)
この記事は、公開されている診療ガイドライン・査読論文・公的機関の資料をもとにした情報提供であり、 医学的な診断・治療を目的としたものではありません。コンタクトレンズは高度管理医療機器です。 購入・変更にあたっては眼科の処方を受けてください。症状が続く場合も受診を検討してください。