まばたきチェック 60秒で測ってみる

ドライアイとは

原因・症状・対策を、日本の診療ガイドラインで整理する

このページの要点

  • ドライアイは「涙が足りない病気」ではない。2016年版の診断基準では、自覚症状があり、かつ涙液層破壊時間(BUT)が5秒以下であることの2つでドライアイと診断される
  • 原因は涙液減少型と蒸発亢進型に分かれる。デスクワークで問題になるのは後者で、ガイドラインはその内因性の原因の一つに瞬目回数低下(まばたきが減ること)を挙げている
  • 自分でできる対策で最も根拠が強いのは、目もとを温めること。マイボーム腺機能不全診療ガイドライン(2023年)が、エビデンスの強さA(強)で「実施する」ことを強く推奨している
  • ガイドラインが推奨する点眼薬は、いずれも市販されていない。ヒアルロン酸点眼・ジクアホソルナトリウム点眼・レバミピド点眼はすべて処方薬で、眼科でしか手に入らない
  • 診断には眼科が要る。BUTは自宅では測れない。ただし、自覚症状の側と、まばたきの回数は、このサイトのツールで自分で確かめられる

「ドライアイ」という言葉は広く知られていますが、中身はかなり誤解されています。 目が乾く感じがすること全部を指す言葉でもなければ、涙の量が少ないという意味でもありません。 ここでは、ドライアイ研究会による「ドライアイ診療ガイドライン」(2019年)「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」(2023年)という2つの日本の診療ガイドラインを原典として、 定義・原因・リスク因子・対策・治療を整理します。数字と推奨は、要約サイトを経由せず条文から引いています。

ドライアイの定義と診断基準

日本では、ドライアイ研究会が発表した「日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016年版)」が使われています。 診断は、次の2つを両方とも満たすかどうかで決まります。

条件中身
自覚症状眼不快感または視機能異常があること
涙液層の安定性フルオレセイン染色による涙液層破壊時間(BUT)が5秒以下であること

ここで注目してほしいのは、条件に「涙の量」が入っていないことです。 涙が十分に出ていても、その層が5秒ももたずに割れてしまえばドライアイにあたります。 ドライアイ診療ガイドラインも、2016年の改訂により「すべてのドライアイではBUTの短縮を伴うとされるに至った」と記しています。 涙の量が保たれていてBUTだけが短いタイプは「BUT短縮型ドライアイ」と呼ばれ、 ガイドラインによれば、これは主に日本から報告が相次いだ一群です。

出典: ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会「ドライアイ診療ガイドライン」日本眼科学会雑誌 123巻5号(令和元年5月10日)

どんな症状が出るのか

診断基準が挙げる自覚症状は、眼不快感視機能異常の2つに分かれます。 「乾く」だけが症状ではない、というのがここでのポイントです。

分類代表的な症状
眼不快感乾いた感じ、ゴロゴロする異物感、目の重さ、痛み・しみる感じ、目の疲れ、まぶしさ
視機能異常かすむ、まばたきをすると一瞬はっきり見える、夕方になると見えにくい

意外に思われるのが「乾く病気なのに涙が出る」という症状です。 目の表面が乾いた刺激で、反射的に涙が出てしまうために起こります。涙が出るからドライアイではない、とは言えません。

自分の症状がこの枠組みのどこに当たるかは、 ドライアイ症状チェックで確かめられます(問診式・カメラ不要)。

原因 — 涙液減少型と蒸発亢進型

ドライアイは、大きく涙液減少型(涙そのものが減る)と蒸発亢進型(涙が蒸発しやすい)に分けられます。 シェーグレン症候群などが前者の代表ですが、デスクワークで問題になるのはほぼ後者です。

ドライアイ診療ガイドラインは、蒸発亢進型を来す原因を内因性外因性に分類しています。

分類ガイドラインが挙げる原因
内因性マイボーム腺機能不全(MGD)、兎眼などの眼瞼異常、瞬目回数低下
外因性ビタミンA欠乏、(点眼剤に含まれる)防腐剤、コンタクトレンズ装用、アレルギー性結膜炎

出典: ドライアイ診療ガイドライン. 日眼会誌 123巻5号 (2019)

この表は、そのままこのサイトの地図になっています。思い当たるところから読んでください。

「瞬目回数低下」がガイドラインに載っている、という事実

まばたきが減ることは、ドライアイの原因として気合いや心がけの話ではなく、 ガイドラインが蒸発亢進型の内因性の原因として名指ししている項目です。 そして、原因のリストの中でこれだけが「自分の作業のしかた」で日々変わります。 このサイトが、読み物ではなくまばたきを測るツールから始まっているのは、そのためです。

どれくらいの人が、ドライアイなのか

ドライアイ診療ガイドラインは、日本の40歳以上の住民を対象にした大規模疫学調査(Koumi Study)の結果として、 男性12.5%、女性21.6%という数字を記載しています。

ただし、これは一般人口の数字です。デスクワークに限ると、割合は跳ね上がります。 日本のオフィスワーカー561人を調べたOsaka Studyでは、ドライアイ「確定」が11.6%、「疑い」が54.0%。 合わせて約3人に2人(65.6%)が該当しました。

出典: Uchino M, et al. Prevalence of dry eye disease and its risk factors in visual display terminal users: the Osaka study. American Journal of Ophthalmology 156(4):759-766 (2013)

リスク因子 — ガイドラインが挙げているもの

ドライアイ診療ガイドラインは、発症に影響する因子を外的因子とライフスタイルに分けて整理しています。 以下はいずれも条文の内容です。

最後の1行の書き方に注目してください。「コンタクトはドライアイの原因になる」と言い切る記事は多いのですが、 ガイドラインは症状が出やすくなることと、病気を発症させることを分けて書いています。 このサイトでも、この区別は崩しません。

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自分でできる対策(根拠がはっきりしている順)

1. 目もとを温める — 最も推奨が強い

セルフケアの中で、日本のガイドラインが最も強く推奨しているのがこれです。 マイボーム腺機能不全診療ガイドライン(2023年)のCQ-18「マイボーム腺機能不全患者に温罨法は有効か?」に対する推奨は、 「実施する」ことを強く推奨する、CQに対するエビデンスの強さはA(強)。 作成委員12人の投票は12人/12人(100%)でした。

温度と時間の目安、そして蒸しタオルと専用デバイスのどちらがよいのか(ガイドラインははっきり書いています)は、 目を温める(温罨法)の根拠と、40℃・5分という数字にまとめました。

出典: マイボーム腺機能不全診療ガイドライン作成委員会「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」日本眼科学会雑誌 127巻2号 109ページ〜(令和5年2月10日)

2. 作業環境をととのえる

日本眼科医会は、生活上の注意として「エアコンの効き過ぎや送風を直接受けるような環境はよくありません」「加湿器を入れるなどして対応しましょう」としています。 乾いた風が顔に当たれば、涙はそのぶん早く蒸発します。風向きを変えるだけで体感が変わることがあります。

画面の高さ・距離・明るさには、厚生労働省が示した数値の基準があります (手元の照度300ルクス以上、視距離おおむね40cm以上、画面上端は眼の高さかやや下)。 職場向けの通達ですが、在宅のデスクにもそのまま使えます。 → 情報機器作業ガイドラインの照度・視距離・作業時間

3. 休憩を挟む

厚生労働省のガイドラインは、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、 次の連続作業までに10〜15分の作業休止時間を設けることを示しています。 席を立てないときの選択肢としては、20分ごとに約6m先を20秒見る 20-20-20ルールがあります (ただし、この方法の根拠の強さには限界があります。リンク先で正直に書きました)。

効果がはっきりしないもの — ブルーライトカット

目の乾き・疲れの対策として真っ先に名前が挙がりますが、 17件の臨床試験をまとめた2023年のコクラン・レビューは、 ブルーライトカットレンズが画面作業による眼精疲労をやわらげるとは言えないと結論づけています。 → ブルーライトカットは効果があるのか

眼科でできること

ドライアイ診療ガイドラインは、治療の選択肢ごとに推奨の強さを示しています。 下の表にあるものは、すべて眼科でしか手に入らない処方薬・処置です。 市販薬の話ではありません。

治療ガイドラインの推奨
ヒアルロン酸点眼「実施する」ことを推奨する
人工涙液点眼「実施する」ことを提案する
ジクアホソルナトリウム点眼「実施する」ことを推奨する
レバミピド点眼「実施する」ことを推奨する
涙点プラグ「実施する」ことを推奨する
副腎皮質ステロイド点眼「実施する」ことを提案する(眼圧上昇に留意が必要)
オメガ3脂肪酸内服「実施する」ことを提案する(本邦では保険適用外)
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)点眼「実施しない」ことを提案する
塩化ベンザルコニウム無添加の点眼「実施する」ことを提案する

出典: ドライアイ診療ガイドライン, ガイドラインサマリー. 日眼会誌 123巻5号 (2019)

ガイドラインが「推奨」しているヒアルロン酸点眼・ジクアホソルナトリウム点眼・レバミピド点眼は、 いずれも市販されていません。ドラッグストアの棚には並ばないものが、推奨の上位を占めています。 これが「市販の目薬で紛らわせ続けるより、一度眼科へ」と言われる理由です。

日本眼科医会も、市販の点眼薬について「短時間で元に戻ってしまいます」「種類によっては防腐剤が含まれているものもあり、たくさん使うことでかえって障害を起こす場合もあります」と注意を促しています。

出典: ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―. 公益社団法人 日本眼科医会

受診を考えたほうがよいとき

受診先は眼科です。診断に必要なBUTの測定は、自宅ではできません。

自宅で確かめられること

BUTは測れませんが、診断基準のもう一方である自覚症状の側と、 原因として挙がっているまばたきの回数は、自分で確かめられます。

出典

  1. ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会. ドライアイ診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123巻5号、令和元年(2019)5月10日.(定義・診断基準、有病率、リスク因子、蒸発亢進型の原因分類、治療の推奨一覧。承認学会: 日本眼科学会・日本角膜学会)
  2. マイボーム腺機能不全診療ガイドライン作成委員会. マイボーム腺機能不全診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 127巻2号 109ページ〜、令和5年(2023)2月10日.(CQ-18 温罨法: 「実施する」ことを強く推奨する、エビデンスの強さA)
  3. 島﨑潤, 横井則彦, 渡辺仁, 天野史郎, 大橋裕一, 木下茂, 他; ドライアイ研究会. 日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016年版). あたらしい眼科 34:309-313, 2017.
  4. Uchino M, et al. Prevalence of dry eye disease and its risk factors in visual display terminal users: the Osaka study. American Journal of Ophthalmology 156(4):759-766, 2013.(日本のオフィスワーカー561人。確定11.6%、疑い54.0%)
  5. ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―. 公益社団法人 日本眼科医会.(市販点眼薬の注意、加湿、コンタクトレンズ、温めること)
  6. 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインと解説. 厚生労働省、令和元年7月12日付け基発0712第3号.

この記事は、公開されている診療ガイドライン・査読論文・公的機関の資料をもとにした情報提供であり、 医学的な診断・治療を目的としたものではありません。個々の症状への対応は眼科医の判断によります。 症状が続く場合は受診を検討してください。